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建物の階数の登記方法と確認時のポイントを解説

建物の階数について、あなたは普段どれくらい意識していますか?おそらく、住んでいる家や利用する建物の「地上何階建て」という表示は気にするでしょう。
しかし、不動産登記簿謄本に記載されている「階数」が、必ずしもあなたのイメージする階数や、建築基準法上の階数と一致するわけではないことをご存知でしょうか。
建物の階数の登記は、その建物の物理的な状況を正確に反映させ、所有権や担保権といった権利関係を明確にするための重要な手続きです。
特に不動産取引を行う際や、増築・減築などで建物の構造が変わった際には、登記上の階数と現況が一致しているかを確認することが非常に大切になります。
この記事では、建物の階数の登記方法と確認時のポイントを解説し、登記上の階数が持つ意味や、現況との違いが生じた場合の対処法について、分かりやすく掘り下げていきます。

目次

建物の階数は登記でどのように扱われるのか

建物の登記簿謄本には、その建物の所在地、種類、構造、床面積などと共に「階数」が記載されています。
この登記上の階数は、不動産登記法や関連する細則に基づいて定められるもので、建物の物理的な状況を公示するための情報の一つです。
では、具体的に登記上の階数はどのように扱われるのでしょうか。
私たちの日常的な感覚や、建物の建築確認申請で用いられる建築基準法上の階数算定とは、異なる場合があります。
この違いを理解することは、不動産の正確な情報を把握する上で非常に重要です。

登記上の「階数」の基本的な考え方と建築基準法との違い

不動産登記における建物の構造の表示には、「木造瓦葺2階建」のように、階数が含まれます。
この階数は、原則として、建物の主要構造部によって区画された各階層を上から数えたものです。
例えば、地上に2つの階層があれば「2階建」と表示されます。
しかし、この算定方法は建築基準法上の階数算定とは異なる場合があります。
建築基準法では、地階(地下室)も原則として階数に算入されますが、不動産登記では「地階」は「階数」としては数えず、「構造」の欄に「地下1階付」のように表示されます。
また、建築基準法では一定の基準を満たすロフトや小屋裏収納は階数に算入されないことが多いですが、登記実務においても、これらが独立した階層と判断されない限り、階数には含まれません。
登記上の階数は、あくまで不動産登記の目的(権利の公示)のために定められた基準に基づいており、建築基準法の基準とは異なる解釈がなされる場合があるのです。
例えば、ある建物が建築基準法上は「地上2階地下1階建て」であっても、登記上は「木造瓦葺2階建(地下1階付)」と表示されることがあります。
この違いは、それぞれの法律が建物の何を目的として規制・公示しているのかという根本的な違いから生じています。

地下室やロフトなど特殊な構造の登記上の扱い

建物の構造には、地下室、塔屋、ロフト、吹き抜け、メゾネット、スキップフロアなど、多様な形態が存在します。
これらの特殊な構造が登記上の階数や床面積にどのように影響するのかは、多くの方が疑問に思う点です。
地下室は、前述の通り、登記上の「階数」には含まれませんが、「構造」の欄に「地下○階付」と明記されます。
地下室の床面積は、地上の階と同様に床面積として登記されます。
塔屋(屋上にある小さな構造物)については、その用途や規模によりますが、原則として登記上の階数には含まれません。
しかし、一定以上の規模や独立した居住空間として利用されている場合は、階数に含まれることもあります。
ロフトや小屋裏収納は、一般的に天井高が低く、固定階段がないなど、建築基準法上「階」とみなされない構造が多いですが、登記実務でも同様に、原則として階数には含まれません。
ただし、小屋裏収納であっても、独立した居住空間として十分な高さや設備があり、実質的に「階」として利用できると判断される場合は、登記上の階数に含まれる可能性もゼロではありません
スキップフロアやメゾネットのような構造は、登記上は各階の床面積を合計し、実質的な階層の数に基づいて階数が表示されることが多いですが、判断が難しいケースも存在します。
これらの特殊な構造を持つ建物の登記においては、個別の構造を正確に把握し、登記実務の基準に照らして判断する必要があります。
迷った場合は、専門家である土地家屋調査士に相談することが最も確実です。

建物の登記簿謄本で階数を確認する方法

建物の正確な情報を知るためには、登記簿謄本(登記事項証明書)を確認することが不可欠です。
特に、建物の構造や規模を示す情報として、階数は重要な要素の一つです。
登記簿謄本は、法務局で取得することができますが、最近ではオンラインでの取得も可能になり、より手軽に情報を確認できるようになりました。
ここでは、登記簿謄本のどこを見れば階数がわかるのか、そして関連する図面情報やオンラインでの確認方法について詳しく見ていきましょう。

登記簿謄本の「表示に関する登記」と建物図面の確認箇所

建物の登記簿謄本は、大きく分けて「表題部」と「権利部」から構成されています。
建物の物理的な状況(所在、種類、構造、床面積、階数など)に関する情報は、このうち「表題部」に記載されています。
表題部の「構造」の欄に、「木造瓦葺2階建」や「鉄骨鉄筋コンクリート造陸屋根地下1階付10階建」のように、建物の主要構造と共に階数が記載されています。
建物の登記上の階数を最も直接的に確認できるのは、この表題部の「構造」の項目です
さらに、登記簿謄本には通常、建物図面と各階平面図が添付されています(ただし、古い登記や一部の例外を除く)。
建物図面は建物の配置や形状、敷地との関係を示し、各階平面図は各階の形状、間取り、そしてそれぞれの階の床面積が記載されています。
各階平面図には「1階平面図」「2階平面図」のように、それぞれの階層が明記されており、これらの図面を合わせて確認することで、登記されている階数が具体的にどのような構造に基づいているのかを視覚的に把握することができます。
特に、複雑な形状の建物や増築履歴がある建物の場合、登記簿謄本だけでなく、これらの図面を合わせて確認することが、より正確な情報を得る上で非常に有効です。

オンラインでの情報取得と確認時の注意点

現在、法務局の窓口に行かなくても、インターネットを利用して登記情報を取得することができます。
「登記情報提供サービス」や「登記・供託オンライン申請システム」を利用すれば、自宅やオフィスから登記簿謄本に記載されている情報(登記事項証明書相当の情報)や、建物図面、各階平面図などの図面情報をPDF形式で取得することが可能です。
これにより、手軽に建物の登記上の階数や構造、床面積などを確認できます。
オンラインで取得できる情報は、法務局が管理する登記情報データベースから提供されるため、原則として最新の情報です。
ただし、確認する際にはいくつかの注意点があります。
まず、オンラインで取得できる情報は「登記事項証明書に記録されている事項」であり、法的な証明力を持つ正式な登記簿謄本(登記事項証明書)そのものではありません
不動産取引や金融機関への提出など、公的な手続きで正式な証明が必要な場合は、法務局の窓口で取得するか、オンライン申請システムを通じて証明書の発行請求を行う必要があります。
また、古い登記情報の場合、建物図面や各階平面図がデータ化されておらず、オンラインで取得できないこともあります。
その場合は、管轄の法務局に直接問い合わせる必要があります。
オンラインでの確認は迅速で便利ですが、その情報の性質と限界を理解した上で利用することが重要です。
特に重要な決定を行う前には、最新かつ正式な登記情報を取得することをお勧めします。

増築や減築で階数が変わった場合の登記手続き

建物を増築したり、一部を取り壊したり(減築)したりすると、建物の構造や床面積、そして場合によっては登記上の階数が変わることがあります。
不動産登記法では、建物の物理的な状況に変更が生じた場合、所有者はその変更を登記簿に反映させる義務があります。
これは「建物表示変更登記」と呼ばれる手続きです。
特に、階数が変わるような大規模な増築や減築を行った場合は、この登記手続きが非常に重要になります。
この登記を怠ると、様々な不利益を被る可能性があります。

階数変更に伴う建物表示変更登記の必要性と申請の流れ

建物の増築や減築によって、登記簿に記載されている建物の構造(特に階数)や床面積と、現況が一致しなくなった場合、所有者はその変更が生じた日から1ヶ月以内に「建物表示変更登記」を申請する義務があります(不動産登記法第57条)。
例えば、平屋建ての建物に2階部分を増築して2階建てになった場合や、3階建ての一部を取り壊して2階建てになった場合などがこれに該当します。
この登記は、建物の物理的な状況を正確に公示し、不動産に関する権利関係の明確性を保つために行われます。
申請は、建物の所在地を管轄する法務局に対して行います。
申請書類としては、登記申請書のほか、変更後の建物図面や各階平面図、増築・減築の事実を証明する書類(建築確認済証や工事完了引渡証明書など)、所有者の印鑑証明書などが必要になります。
申請を受け付けた法務局は、必要に応じて現地調査を行い、建物の現況と申請内容、添付図面が一致しているかを確認します。
この一連の手続きを経て、登記簿の表題部が変更され、新しい階数や床面積が反映されます。
建物表示変更登記は、建物の所有者にとって義務であり、これを怠ると10万円以下の過料に処される可能性があるため、変更が生じた際には速やかに手続きを行う必要があります。

専門家への依頼と登記を怠るリスク

建物表示変更登記は、専門的な知識と正確な測量、図面作成が必要となる手続きです。
特に、複雑な構造の建物や、境界が不明確な場合など、専門家である土地家屋調査士に依頼するのが一般的です。
土地家屋調査士は、建物の正確な測量を行い、登記申請に必要な建物図面や各階平面図を作成し、申請手続きを代行してくれます。
自分で申請することも可能ですが、測量や図面作成に専門知識が必要な上、法務局とのやり取りや書類の準備に時間と労力がかかります。
土地家屋調査士に依頼することで、手続きをスムーズかつ正確に進めることができ、時間や手間の負担を大幅に軽減できます
費用は建物の規模や構造、地域によって異なりますが、一般的には十数万円から数十万円程度かかることが多いです。
一方、建物表示変更登記を怠り、登記簿と現況が一致しない状態を放置すると、様々なリスクが生じます。
まず、前述の過料のリスクがあります。
さらに、不動産を売買、贈与、相続する際に、登記簿と現況が異なることが問題となり、手続きが滞る可能性があります。
金融機関から融資を受ける際にも、担保となる不動産の正確な情報が不明確であるとして、融資が受けられない、あるいは評価額が低くなるなどの不利益が生じる可能性があります。
また、固定資産税の評価額が適正でなくなる可能性も考えられます。
このように、登記を怠ることは、将来的に大きな問題を引き起こす原因となります。
建物の状況に変更があった場合は、速やかに専門家に相談し、適切な登記手続きを行うことが、不動産を安心して所有し、活用するための基本です。

登記上の階数と現況に違いがある場合の確認ポイント

建物の登記簿謄本を確認した際に、記載されている階数や構造が、実際に目で見た建物の現況と異なっている場合があります。
このような不一致は、様々な原因で発生し得ますが、放置しておくと後々大きな問題に発展する可能性があります。
特に不動産取引を検討している場合や、自身の所有する建物の正確な情報を把握したい場合には、この不一致に気づき、その原因を究明し、適切に対応することが非常に重要です。
ここでは、登記と現況の違いが引き起こす可能性のある問題や、違いを発見した場合の確認ポイント、そして取るべき対応策について詳しく解説します。

不一致が引き起こす問題と不動産取引への影響

登記上の階数や構造が建物の現況と異なる場合、最も顕著な問題は、不動産の正確な情報が公示されていない、という点です。
これは、特に不動産取引において深刻な影響を及ぼします。
例えば、買主が登記簿謄本を確認して「2階建て」だと思って購入した建物が、実際には増築されていて「3階建て」になっていた、あるいは登記されていない地下室があった、といったケースです。
このような場合、買主は契約内容と異なる物件を取得したことになり、契約不適合責任(以前の瑕疵担保責任)を追及される可能性があります。
また、金融機関が不動産を担保として融資を行う際、登記簿の情報に基づいて評価を行うため、現況との不一致があると正確な担保価値を算定できず、融資が実行されない、あるいは融資額が減額されるといった事態も起こり得ます。
登記と現況の不一致は、不動産の流動性を低下させ、取引の安全性を損なうだけでなく、将来的な売却や担保設定の際に予期せぬトラブルの原因となります
さらに、固定資産税は登記情報や市町村の家屋調査に基づいて評価されるため、登記が正確でないと適正な税額が算定されない可能性もあります。
このような問題を避けるためにも、不動産取引を行う前や、自身の所有する建物の情報を確認する際には、登記簿謄本と現況を照らし合わせることが不可欠です。

違いを発見した場合の是正手続きと専門家への相談

もし、登記簿謄本に記載されている階数や構造が、建物の現況と異なっていることに気づいたら、速やかにその原因を特定し、必要に応じて登記内容を是正する手続きを行う必要があります。
まず、なぜ違いが生じたのかを把握することが第一歩です。
考えられる原因としては、過去の増築や減築、改築工事が行われた際に、建物表示変更登記が適切に行われなかった、あるいは登記申請時の測量や記載に誤りがあったなどが挙げられます。
古い建物の場合、登記簿の情報が作成された時点と現況の間に長い年月が経過しており、その間に様々な変更があったにもかかわらず、登記が追いついていないというケースも少なくありません。
原因を特定するためには、建築確認申請時の書類や、過去のリフォーム・増築工事に関する書類などを確認することも有効です。
違いの原因が判明し、現況に合わせて登記内容を変更する必要がある場合は、建物表示変更登記の申請を行います
この手続きは、前述の通り、専門的な知識と正確な測量が必要となります。
そのため、違いを発見した早い段階で、土地家屋調査士に相談することをお勧めします。
土地家屋調査士は、建物の現況を正確に測量し、登記簿の情報や過去の図面などと比較検討し、不一致の原因を究明してくれます。
その上で、現況に合わせた正確な建物図面や各階平面図を作成し、建物表示変更登記の申請手続きを代行してくれます。
専門家のサポートを受けることで、複雑な手続きをスムーズに進め、登記簿と現況の不一致という問題を確実に解決することができます。
登記上の情報は不動産の権利関係の基礎となる重要な情報ですので、不一致を放置せず、必ず是正することが、不動産を健全に管理するための責任と言えます

まとめ

建物の階数という情報は、私たちの日常的な感覚や建築基準法の基準とは異なり、不動産登記においては独自の基準で扱われています。
登記上の階数は、登記簿謄本の表題部に記載されており、建物の構造や床面積と共に、その建物の物理的な状況を公示する重要な要素です。
登記簿謄本に添付される建物図面や各階平面図を合わせて確認することで、より詳細な情報を把握できます。
これらの情報は、法務局の窓口だけでなく、オンラインサービス

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