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登記名義人の変更手続きとその際の注意点

不動産の登記名義人の変更手続きは、人生の大きな節目、例えば大切なご家族からの相続、夢のマイホーム購入、あるいはご親族への贈与など、様々な場面で必要になります。
この手続きは一見複雑に感じられるかもしれませんが、正確な知識と準備があればスムーズに進めることができます。
今回は、登記名義人の変更手続きの全体像から、ケースごとの具体的な流れ、そして見落としがちな注意点まで、初心者の方にも分かりやすく丁寧にご説明します。
この記事を最後までお読みいただければ、登記名義変更に関する不安が解消され、自信を持って手続きに臨めるようになるでしょう。
ぜひ最後までお付き合いください。

目次

登記名義変更はなぜ必要?放置のリスクとは

不動産を所有しているという事実は、法務局に備え付けられている登記簿に記録されます。
この登記簿に記載されている所有者の情報を、新しい所有者の情報に書き換える手続きが「登記名義変更」です。
なぜこの手続きが必要なのでしょうか?そして、もし変更を怠るとどのような問題が発生するのでしょうか。

不動産の登記が持つ意味と名義変更の重要性

不動産登記は、その不動産が「誰のものか」「どのような状態か」を社会に示す公的な制度です。
登記簿に所有者として名前が記載されていることで、その人が法的にその不動産の所有者であることが証明されます。
これは、例えばあなたが土地や建物を購入した際に、「確かに私のものになった」と公に示すための非常に重要なステップです。
登記名義を変更することで、新しい所有者はその不動産を自由に売却したり、賃貸に出したり、あるいは担保に入れて融資を受けたりといった法的な権利を主張できるようになります。
逆に言えば、登記名義が旧所有者のままだと、新しい所有者としてこれらの権利をスムーズに行使することが難しくなります。
また、登記は取引の安全を守る役割も果たしています。
ある不動産を購入しようとする人が、登記簿を確認することで、その不動産の現在の所有者が誰なのか、抵当権などの権利が設定されていないかなどを正確に把握できるため、安心して取引を進めることができるのです。
このように、登記名義の変更は、新しい所有者の権利を確立し、将来的な不動産の活用や処分をスムーズにするために不可欠な手続きと言えます。

名義変更を怠ると発生する具体的な問題

登記名義の変更を怠ると、後々様々なトラブルや不利益が生じる可能性があります。
最も一般的なのは、不動産を売却したい、あるいは担保に入れて融資を受けたいと考えた際に、手続きがスムーズに進まなくなることです。
登記簿上の名義が旧所有者のままだと、あなたが現在の所有者であることを第三者に証明できないため、買主や金融機関から取引を拒否される可能性があります。
特に相続の場合、名義変更をせずに時間が経過すると、さらに相続が発生して権利関係が複雑化し、いざ名義変更をしようとした際に、多数の相続人から同意を得る必要が生じるなど、手続きが非常に煩雑になるリスクがあります。
例えば、祖父から父、父から自分へと相続が発生し、その都度名義変更をしていなかった場合、いざ自分が売却しようとした時には、存命の相続人全員(おじ、おば、いとこなども含む)の同意と署名・捺印が必要になる、といったケースも珍しくありません。
また、もし旧所有者に借金があり、その債権者が旧所有者名義の不動産に差押えを申し立てた場合、新しい所有者であるあなたの権利を主張するのが難しくなる可能性もゼロではありません。
名義変更をしないことによる最大のデメリットは、あなたの正当な権利が法的に不安定な状態に置かれることです。
将来的な不要なトラブルや費用、時間の浪費を避けるためにも、登記名義変更は速やかに、かつ正確に行うことが強く推奨されます。

相続・売買・贈与…ケース別!登記名義変更手続きの流れと必要書類

登記名義変更の手続きは、その原因(なぜ名義が変わるのか)によって、必要な書類や手続きの流れが少しずつ異なります。
主な原因としては、「相続」「売買」「贈与」の3つが挙げられます。
それぞれのケースについて、手続きの全体像と、共通して必要となる基本的な書類、そしてその取得方法をご説明します。

相続による名義変更手続きの進め方

相続による登記名義変更は「相続登記」と呼ばれ、被相続人(亡くなった方)から相続人へ不動産の所有権を移転する手続きです。
相続登記は、遺言書の有無や、相続人全員で遺産分割協議を行ったかどうかによって、必要な書類や手続きが異なります。
遺言書がある場合は、原則として遺言書の内容に従って名義変更を行います。
遺言書がない場合は、相続人全員で遺産分割協議を行い、誰がどの不動産を相続するかを決定し、「遺産分割協議書」を作成します。
遺産分割協議がまとまらない場合は、家庭裁判所での調停や審判を経て最終的に名義が確定します。
手続きとしては、まず被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本、相続人全員の現在の戸籍謄本、住民票、印鑑証明書などを収集します。
次に、固定資産評価証明書を取得し、登記申請書を作成します。
遺言書や遺産分割協議書がある場合はそれらも添付書類となります。
これらの書類を揃え、不動産の所在地を管轄する法務局に申請を行います。
法務局での審査を経て、登記が完了すると、登記識別情報(いわゆる権利証)が発行されます。
相続登記は、2024年4月1日から義務化され、相続により不動産を取得したことを知った日から3年以内に申請しなければならなくなりました。
正当な理由なくこの義務を怠ると、過料が科される可能性もあるため、注意が必要です。

売買・贈与による名義変更手続きの進め方

売買や贈与による登記名義変更は、当事者間の合意に基づいて不動産の所有権を移転する手続きです。
これらの手続きは、原則として新しい所有者(買主や受贈者)と元の所有者(売主や贈与者)が共同で申請を行います。
売買の場合は、売買契約が成立し、代金の支払いが完了した後に名義変更を行うのが一般的です。
贈与の場合は、贈与契約が成立した後に行います。
手続きの流れとしては、まず売買契約書や贈与契約書を作成します。
売買の場合は、売買代金の領収証なども必要になります。
次に、登記申請書を作成し、必要書類を添付して法務局に申請します。
売主や贈与者は登記済証(権利証)または登記識別情報を提供する必要があります。
また、売主や贈与者の印鑑証明書、買主や受贈者の住民票なども必要書類となります。
売買や贈与による登記は、相続登記とは異なり、申請義務や明確な期限は設けられていませんが、所有権が移転したにも関わらず登記名義が旧所有者のままだと、前述したような様々なリスクが生じるため、速やかに手続きを行うことが重要です。
特に売買の場合、買主は代金を支払っているにも関わらず法的な所有権が不安定な状態となるため、通常は決済と同時に名義変更の手続き(司法書士への依頼)を行います。
贈与の場合も、後々のトラブルを避けるため、契約後速やかに手続きを進めるのが賢明です。

共通して準備が必要な書類と取得方法

登記名義変更の手続きには、原因が何であれ共通して必要となる基本的な書類がいくつかあります。
これらの書類の多くは公的な機関で取得する必要があります。
まず、不動産の登記簿謄本(登記事項証明書)は必ず必要です。
これは全国どこの法務局でも取得できますし、オンラインでの請求も可能です。
不動産の所有者や所在地、面積、権利関係などが記載されています。
次に、不動産の固定資産評価証明書(または固定資産税納税通知書に添付されている課税明細書)が必要です。
これは、登記にかかる登録免許税を計算するために使用されます。
固定資産評価証明書は、不動産の所在地の市町村役場(東京都23区内の場合は都税事務所)で取得できます。
所有者本人以外が取得する場合は、委任状が必要な場合もあります。
また、登記申請をする方の住民票(法人の場合は登記事項証明書)が必要です。
住民票は、お住まいの市区町村役場で取得できます。
さらに、登記申請書に押印する印鑑の印鑑証明書が必要となる場合があります。
特に、所有権を失う側(売主、贈与者、相続登記における遺産分割協議で不動産を取得しない相続人など)は、本人確認と意思確認のために印鑑証明書が求められます。
印鑑証明書も、お住まいの市区町村役場で取得できますが、事前に印鑑登録が必要です。
これらの書類は、発行から3ヶ月以内、または6ヶ月以内など有効期限が定められているものが多いので、準備するタイミングに注意が必要です。
手続きの直前にまとめて取得するように計画すると良いでしょう。

費用や期限、専門家への依頼…登記名義変更の気になる疑問と注意点

登記名義変更の手続きを進めるにあたって、費用はどれくらいかかるのか、手続きに期限はあるのか、自分でできるのか専門家に依頼すべきかなど、様々な疑問が浮かぶかと思います。
ここでは、そうした気になる点や、手続きを進める上で特に注意すべきポイントについて詳しく解説します。

登記にかかる費用(登録免許税、司法書士報酬など)

登記名義変更にかかる費用は、主に「登録免許税」と「専門家への報酬」の二つに分けられます。
登録免許税は、登記申請を行う際に国に納める税金です。
税額は、不動産の固定資産評価額に一定の税率をかけて計算されます。
この税率は、登記の原因によって異なります。
例えば、相続による所有権移転登記の税率は固定資産評価額の0.4%ですが、売買による場合は2.0%、贈与による場合は2.0%(特定の要件を満たす場合は軽減措置あり)です。
ただし、一定の条件を満たす相続登記については、土地にかかる登録免許税が免税となる特例措置が設けられている場合もありますので、最新の情報を確認することが重要です。
登録免許税は、収入印紙を購入して登記申請書に貼付する方法や、オンライン申請の場合は電子納付で行います。
もう一つの費用は、司法書士などの専門家に手続きを依頼した場合に支払う報酬です。
司法書士報酬に明確な規定はありませんが、一般的には不動産の個数や評価額、手続きの複雑さ、必要書類の収集代行の有無などによって変動します。
相続登記の場合は10万円~20万円程度、売買や贈与の場合は10万円~15万円程度が目安となることが多いですが、事案によって大きく異なるため、事前に見積もりを取ることをお勧めします。
これらの費用の他に、必要書類を取得するための手数料(戸籍謄本1通450円、住民票1通300円程度など)や、郵送費用なども実費としてかかります。
費用の総額は、手続きの内容や依頼する専門家によって差が出ますので、複数から見積もりを取ることも有効です。

手続きの期限や急ぐべきケース

登記名義変更には、ケースによって期限が定められている場合があります。
最も重要なのは、2024年4月1日から義務化された相続登記です。
相続により不動産を取得したことを知った日から3年以内に申請しなければなりません。
正当な理由がないのにこの期間内に申請を怠ると、10万円以下の過料が科される可能性があります。
この「知った日」とは、通常、被相続人が亡くなり、かつ自分が不動産を相続したことを知った日を指します。
遺産分割協議が成立した場合は、遺産分割協議が成立した日から3年以内となります。
一方、売買や贈与による登記名義変更には、法律上の明確な申請期限は定められていません。
しかし、前述したように、名義変更をしないことによるリスク(権利の不安定化、将来的なトラブルなど)を避けるため、所有権が移転したら速やかに手続きを行うことが強く推奨されます。
特に売買の場合は、買主が代金を支払っているにも関わらず名義が移転しない状態は非常に危険です。
通常は決済と同時に登記申請が行われます。
贈与の場合も、贈与契約後できるだけ早く手続きを済ませることで、贈与の事実を公的に証明し、後々の争いを防ぐことにつながります。
また、不動産をすぐに売却したい、担保に入れて融資を受けたいといった具体的な予定がある場合は、その期日までに登記を完了させる必要がありますので、計画的に手続きを進めることが重要です。
相続登記の義務化により、今後は期限を意識した迅速な対応がより一層求められます。

自分でやる?専門家(司法書士)に頼む?それぞれのメリット・デメリット

登記名義変更の手続きは、専門家である司法書士に依頼するのが一般的ですが、ご自身で手続きを行うことも可能です。
それぞれにメリットとデメリットがあります。
自分で手続きを行う最大のメリットは、司法書士に支払う報酬が発生しないため、費用を抑えられる点です。
また、ご自身で書類を集め、法務局に申請することで、登記制度への理解が深まるという側面もあります。
しかし、デメリットとしては、手続きに関する専門知識が必要となること、必要書類の収集や登記申請書の作成に時間と手間がかかること、書類に不備があると補正を求められたり、最悪の場合は申請が却下されたりするリスクがあることが挙げられます。
特に、相続人が多数いる場合や、過去の住所移転が多い場合など、必要書類の収集が非常に煩雑になるケースもあります。
一方、司法書士に依頼する最大のメリットは、専門家が正確かつ迅速に手続きを進めてくれるため、手間や時間を大幅に省け、安心して任せられる点です。
書類の収集から登記申請書の作成、法務局への申請まで、ほとんどの手続きを代行してくれます。
デメリットとしては、司法書士報酬が発生するため、費用が高くなる点です。
ご自身の状況や、手続きにかけることができる時間や労力、そして費用をどこまで抑えたいかを考慮して、自分でやるか専門家に依頼するかを判断することが重要です。
複雑なケースや、確実に手続きを完了させたい場合は、迷わず司法書士に相談することをお勧めします。

意外と知らない!登記名義変更でつまずきやすいポイント

登記名義変更の手続きは、一見マニュアル通りに進めば問題ないように思えますが、実は多くの人がつまずきやすい落とし穴が存在します。
ここでは、私が実務を通じて感じた、見落としがちな注意点をいくつかご紹介します。
一つ目は、古い登記簿謄本に記載されている所有者の住所や氏名が、現在の住民票や戸籍謄本と一致しない場合です。
特に相続登記で、被相続人が何度も転居していたり、婚姻などで氏名が変わっていたりする場合、登記簿上の住所・氏名から現在の住所・氏名へのつながりを証明するために、住民票の除票や戸籍の附票、改製原戸籍などを複数取得する必要が生じることがあります。
これらの書類がすべて揃わないと、名義のつながりを証明できず、手続きが進まなくなってしまいます。
二つ目は、相続登記における遺産分割協議書の作成です。
相続人全員の署名・実印での押印が必要ですが、遠方に住んでいる相続人がいたり、相続人同士の関係が疎遠だったりする場合、全員から署名・押印をもらうのに時間がかかったり、意見の対立により協議がまとまらなかったりするケースがあります。
遺産分割協議書の内容に不備があると、登記申請を受け付けてもらえません。
三つ目は、売買や贈与における登記識別情報(権利証)の紛失です。
登記識別情報は再発行されないため、紛失した場合は、司法書士による本人確認情報の作成や、事前通知制度を利用する必要があります。
これらの手続きは別途費用がかかりますし、手間も増えます。
私が経験したケースでは、贈与の際に贈与者が権利証をどこにしまったか分からなくなり、手続きが大幅に遅れてしまったことがありました。
権利証は非常に重要な書類ですので、大切に保管しておくことが何より重要です。
これらのつまずきやすいポイントを事前に知っておくことで、スムーズな手続きにつながります。
不明な点があれば、自己判断せず、早めに専門家である司法書士に相談することをお勧めします。

まとめ

不動産の登記名義人の変更手続きは、不動産を所有する上で非常に重要な手続きです。
相続、売買、贈与など、原因によって手続きの流れや必要書類は異なりますが、共通して言えるのは、名義変更を放置すると将来的に大きなトラブルや不利益につながるリスクがあるということです。
特に相続登記は義務化されましたので、期限内に確実に手続きを行う必要があります。
手続きには、登録免許税や専門家への報酬といった費用がかかりますが、ご自身の状況や手続きの複雑さに応じて、自分で挑戦するか、司法書士に依頼するかを選択できます。
ご自身で手続きを行う場合は、費用を抑えられるメリットがある反面、専門知識や手間、書類不備のリスクが伴います。
一方、司法書士に依頼すれば、費用はかかりますが、正確かつスムーズに手続きを進めてもらえる安心感があります。
どちらの方法を選ぶにしても、必要書類の準備や手続きの流れを事前にしっかりと把握しておくことが成功の鍵となります。
もし手続きに関して少しでも不安な点があれば、自己判断で進めるのではなく、不動産登記の専門家である司法書士に相談することをお勧めします。
専門家のアドバイスを受けることで、複雑なケースでも安心して手続きを進めることができるでしょう。
この記事が、あなたの登記名義変更手続きの第一歩を踏み出すための一助となれば幸いです。

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