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増築登記の基本手続き面積変更時に知っておくべきこと

マイホームをより快適にするために増築を検討されている方も多いでしょう。
家族構成の変化やライフスタイルの変化に合わせて部屋を増やしたり、趣味のスペースを作ったり。
夢が膨らむ増築ですが、一つ忘れてはならない重要な手続きがあります。
それが「増築登記」です。
特に建物の床面積が増える増築を行った場合は、この登記手続きが非常に重要になります。
増築登記の基本手続き面積変更時に知っておくべきことは多岐にわたりますが、適切な知識を持っていれば、その後のトラブルを防ぎ、安心して暮らすことができます。
この記事では、増築登記の基本から、面積変更に伴う手続きの詳細、費用や期間、そして見落としがちな注意点まで、分かりやすく解説していきます。
これから増築を考えている方も、すでに増築を終えた方も、ぜひ最後までお読みください。

目次

増築登記とは?なぜ面積変更時に必要なのか

増築登記とは、建物を増築した場合に、建物の登記記録(登記簿)の内容を現状に合わせて変更する手続きのことです。
正式には「建物表題部変更登記」と呼ばれます。
この登記は、建物の物理的な状況、具体的には所在、家屋番号、種類(居宅、店舗など)、構造(木造、鉄骨造など)、そしてもっとも重要な床面積に変更があった場合に申請する義務があります。
増築によって床面積が増加した場合は、必ずこの増築登記が必要になります。

増築登記の基本的な定義と目的

増築登記は、建物の現状を法的に正確に記録することを目的としています。
建物の登記記録は、その建物の所有者や物理的な状況を公示するものであり、不動産取引や相続、贈与、あるいは金融機関からの融資を受ける際などに不可欠な情報源となります。
増築によって建物の面積や構造が変わると、登記記録と現状との間に不一致が生じます。
この不一致を解消し、登記記録を最新の状態に保つことが増築登記の基本的な目的です。
登記記録が現状と異なっていると、建物の正確な情報が公示されず、様々な場面で不都合が生じる可能性があります。
例えば、将来建物を売却しようとした際に、買主が登記記録と実際の建物が違うことに気づき、取引がスムーズに進まないといったケースが考えられます。
また、金融機関が住宅ローンを組む際に建物を評価する際にも、登記記録は重要な判断材料となります。

面積変更が登記に与える影響

増築による面積変更は、増築登記において最も重要な変更点の一つです。
建物の床面積は、固定資産税の計算根拠となる重要な情報であり、また建物の経済的な価値を判断する上でも基準となります。
増築によって床面積が増加した場合、登記簿上の床面積もそれに合わせて変更する必要があります。
この面積変更の登記は、単に数字を書き換えるだけでなく、増築部分を含めた建物の図面(各階平面図、建物図面)を作成し直して法務局に提出する必要があります。
建物の床面積は、壁その他の区画の中心線で囲まれた部分の水平投影面積によって計算されます。
増築した部分の床面積を正確に測定し、全体の床面積を算出することが求められます。
この面積の計算は専門的な知識が必要となる場合が多く、正確な図面作成も容易ではありません。
面積が変更されることで、建物の評価額にも影響が出ることが一般的です。

登記をしないことのリスクと罰則

増築登記は、建物の物理的な変化があった日から1ヶ月以内に行うことが不動産登記法によって義務付けられています。
この義務を怠り、正当な理由なく登記申請を行わない場合、10万円以下の過料に処される可能性があります。
罰則があることも重要ですが、それ以上に大きなリスクは、登記をしないことによって生じる実質的な不利益です。
登記記録が現状と異なっていると、建物の所有権を第三者に主張することが難しくなる場合があります。
例えば、増築部分が登記されていない状態で建物を相続した場合、その増築部分が相続財産として明確に把握されず、遺産分割協議が複雑になる可能性も否定できません。
さらに、未登記の増築がある建物は、売却時の買主からの信頼を得にくく、売却価格に影響が出たり、最悪の場合、売却自体が難しくなることもあります。
金融機関も、登記されていない増築部分を担保評価に含めない場合が多く、住宅ローンの借り換えなどが難しくなるケースも見られます。
このように、登記をしないことは法的なリスクだけでなく、将来的な不動産の活用や処分において様々な障害となるのです。

増築登記の具体的な手続きの流れと必要書類

増築登記は、建物の物理的な状況に変更があったことを法務局に届け出る手続きです。
所有者自身で行うことも可能ですが、専門的な知識や正確な測量、図面作成が必要となるため、多くの場合、土地家屋調査士に依頼します。
手続きの流れを事前に把握しておくことで、スムーズな登記申請を進めることができます。

申請から完了までの全体像

増築登記の申請から完了までの流れは、大きく分けて「準備」「申請」「完了」の3段階です。
まず「準備」段階では、増築後の建物の正確な測量を行い、各階平面図や建物図面といった登記に必要な図面を作成します。
同時に、所有者の住民票や、増築の経緯を示す書類(例えば、建築確認済証や検査済証など。
ただし、増築の規模によっては不要な場合もあります)を収集します。
この準備段階が最も専門的な知識と手間がかかる部分です。
次に「申請」段階では、作成した申請書と必要書類一式を管轄の法務局に提出します。
提出後、法務局の登記官が増築部分を確認するために現地調査を行うことがあります。
書類に不備がなければ審査が進み、問題がなければ登記が実行されます。
最後に「完了」段階では、登記が完了した旨の通知を受け取り、新しい登記記録(登記事項証明書)を取得して内容を確認します。
一連の手続きは、書類の準備から法務局の審査期間も含めると、一般的に数週間から1ヶ月程度かかることが多いです。
ただし、書類の不備や法務局の混雑状況によっては、さらに時間がかかることもあります。

自分で申請する場合の準備と注意点

増築登記を自分自身(本人申請)で行うことも法律上は可能です。
費用を抑えられるというメリットはありますが、専門的な知識と正確な作業が求められるため、多くの時間と労力が必要になります。
自分で申請する場合の最も重要な準備は、正確な測量と登記に必要な図面の作成です。
建物の各辺の長さや部屋の用途、構造、床面積などを正確に測量し、法務局の定める規格に沿った図面を作成しなければなりません。
図面の作成には専用のソフトが必要になる場合もあり、慣れていないと非常に難しい作業となります。
また、法務局に提出する申請書も、定められた様式に従って正確に記載する必要があります。
誤りがあると補正を求められたり、申請が却下されたりする可能性があります。
自分で申請する際には、事前に管轄の法務局に相談に行くことを強くお勧めします。
法務局には登記相談窓口が設けられており、必要書類や申請書の書き方についてアドバイスを受けることができます。
しかし、法務局は測量や図面作成の方法を教えてくれるわけではありません。
正確な測量や図面作成に自信がない場合は、無理せず専門家への依頼を検討した方が良いでしょう。
自分で申請する場合、これらの専門的な作業を全て自分で行う必要があるため、時間と正確性が求められます。

専門家(土地家屋調査士)に依頼するメリットと費用相場

増築登記の申請は、土地や建物の物理的な状況に関する登記の専門家である土地家屋調査士に依頼するのが一般的です。
土地家屋調査士に依頼する最大のメリットは、専門知識と技術によって正確かつスムーズに手続きを進めてもらえることです。
複雑な測量や図面作成、必要書類の収集、法務局とのやり取りなどを全て任せられるため、所有者自身の負担が大幅に軽減されます。
特に、建物の構造が複雑な場合や、増築部分の面積計算が難しい場合などは、専門家の正確な判断が不可欠です。
また、法改正や登記実務に関する最新の情報に基づいた適切な手続きを行ってくれるため、申請の不備による遅延や却下のリスクを最小限に抑えることができます。
土地家屋調査士に依頼する場合の費用(報酬)は、増築の規模や建物の構造、土地の形状などによって異なりますが、一般的には10万円から20万円程度が相場と言われています。
これに加えて、法務局に納める登録免許税や、必要書類の取得費用などが実費としてかかります。
費用は安くはありませんが、正確性と安心を買うという意味では、多くの人にとって納得のいく選択肢と言えるでしょう。
複数の土地家屋調査士から見積もりを取り、サービス内容や費用を比較検討することをお勧めします。
専門家に依頼することで、登記手続きに関する心配事から解放され、増築後の新しい生活に集中することができます。

登記に必要な書類一覧とその取得方法

増築登記(建物表題部変更登記)の申請には、いくつかの書類が必要になります。
主な必要書類は以下の通りです。

1. 建物表題部変更登記申請書:法務局のウェブサイトからダウンロードできる様式に必要事項を記載します。
申請の理由、変更内容(床面積など)、申請人の情報などを正確に記載します。

2. 建物図面・各階平面図:増築後の建物全体の形状、構造、床面積、敷地との位置関係などを示す図面です。
法務局の定める規格に沿って作成する必要があります。
自分で作成する場合は専門知識と正確な測量が必要です。

3. 住民票:申請人が所有者本人であることを証明するために必要です。

4. 所在図:建物の敷地がどこにあるかを示す図面です。
住宅地図などで代用できる場合もあります。

5. 工事完了引渡証明書+工事会社の印鑑証明書(原本):増築工事を行った建設会社などから発行してもらう書類です。
増築が完了したことを証明するものです。
ただし、自分で工事した場合や、小規模な増築の場合は不要なこともあります。

6. 建築確認済証・検査済証:増築の規模によっては、建築基準法に基づく確認申請や完了検査が必要になります。
その場合に発行される書類の写しが必要となります。
増築の規模や内容によって必要かどうかが変わります。

7. その他:増築の経緯や状況によって、他の書類(例えば、相続による増築の場合は相続関係を証明する書類など)が必要となる場合があります。

これらの書類のうち、住民票や建築確認済証・検査済証はご自身で取得できますが、建物図面・各階平面図や申請書は専門的な知識がないと作成が難しい書類です。
工事完了引渡証明書は工事を依頼した業者から発行してもらいます。
必要書類は増築の内容や建物の状況によって異なる場合があるため、申請前に法務局や専門家によく確認することが重要です。
書類の不備があると、登記手続きが遅れる原因となります。

増築登記にかかる費用と期間、知っておきたい税金への影響

増築登記を行うにあたって、気になるのが費用と期間、そして増築がその後の税金にどのように影響するのかという点でしょう。
これらの情報を事前に把握しておくことで、計画的に手続きを進めることができます。

登記費用(登録免許税、専門家報酬)の目安

増築登記にかかる費用は、主に「登録免許税」と「専門家報酬」の二つに分けられます。
登録免許税は、登記申請時に法務局に納める税金です。
増築登記の場合、登録免許税は不動産登記法によって定められており、登記の種類や内容によって税額が計算されます。
建物表題部変更登記(増築)の場合、登録免許税はかかりません。
建物に関する権利の登記(所有権保存登記や抵当権設定登記など)には登録免許税がかかりますが、建物の物理的な状況に関する登記(表題登記や表題部変更登記)には原則として登録免許税は課税されないのです。
これは、建物表題登記や表題部変更登記が、権利の得喪ではなく建物の物理的状況を公示するための登記であるためです。
したがって、増築登記自体にかかる国への税金は基本的にゼロです。

費用の大部分を占めるのは、もし土地家屋調査士に依頼した場合の「専門家報酬」です。
前述の通り、この報酬額は増築の規模、建物の構造、測量の難易度などによって大きく変動しますが、一般的には10万円から20万円程度が目安となります。
例えば、既存の建物にシンプルな箱型の部屋を増築した場合と、複雑な形状の二階建て部分を増築した場合では、測量や図面作成の手間が大きく異なるため、報酬額も変わってきます。
また、法務局への交通費や、必要書類の取得にかかる実費(住民票の取得費用など)が別途かかる場合があります。
自分で申請する場合は専門家報酬はかかりませんが、測量機器のレンタル費用や、図面作成ソフトの購入費用などがかかる可能性があり、また何よりもご自身の膨大な時間と労力がコストとなります。
費用を正確に知るためには、複数の土地家屋調査士から具体的な見積もりを取ることが最も確実です。
見積もりには、報酬の内訳や実費についても詳しく記載してもらうと良いでしょう。

手続きにかかる一般的な期間

増築登記の手続きにかかる期間は、いくつかの要因によって変動しますが、一般的には増築工事が完了し、必要書類が全て揃ってから登記が完了するまで、数週間から1ヶ月程度を見込んでおくと良いでしょう。
この期間には、土地家屋調査士が測量や図面作成を行う期間、必要書類を収集する期間、そして法務局での審査期間が含まれます。
特に法務局の審査期間は、申請件数や担当の登記官の状況によって変わるため、正確な日数を予測することは難しい場合があります。
また、申請書類に不備があった場合は、法務局から補正を求められ、その対応に時間がかかることで全体の期間が延びてしまいます。
自分で申請する場合は、測量や図面作成に慣れていないと、これらの作業だけで1ヶ月以上かかることも珍しくありません。
さらに、法務局とのやり取りにも時間がかかる可能性があります。
スムーズに手続きを進めるためには、増築工事が完了する前から必要書類の準備を始めたり、信頼できる土地家屋調査士に早めに相談したりすることが有効です。
特に、住宅ローンの借り換えなどで増築登記の完了を急ぐ必要がある場合は、事前に法務局や専門家に相談し、スケジュールに余裕を持って手続きを進めることが非常に重要になります。

増築登記が固定資産税や相続税にどう影響するか

増築登記を行うことで、建物の床面積や評価額が変更されるため、それに伴い固定資産税や都市計画税の税額が変わるのが一般的です。
固定資産税は、毎年1月1日時点の土地や建物の所有者に対して課税される税金で、その税額は固定資産税評価額に基づいて計算されます。
増築によって建物の床面積が増加すると、その評価額も増加することが多いため、結果として固定資産税額も上がる可能性が高いです。
増築部分の評価額は、増築の構造や仕上げ、用途などによって個別に算出されます。
例えば、豪華な内装を施した増築部分であれば、評価額も高くなる傾向があります。
増築後の固定資産税額については、登記完了後に役所(市町村役場や都税事務所)から送られてくる固定資産税の納税通知書で確認することができます。
役所の家屋調査担当者が現地調査を行い、増築部分を含めた建物の評価額を再算定します。

相続税への影響については、増築によって建物の評価額が上がると、相続財産全体の評価額が増加し、結果として相続税額に影響を与える可能性があります。
相続税の計算における建物の評価額は、固定資産税評価額を基にするのが一般的です。
したがって、増築登記によって固定資産税評価額が上がれば、相続税評価額も上がり、課税対象となる財産が増えることになります。
増築登記をしないまま相続が発生した場合、未登記の増築部分が相続財産として適切に評価されないリスクがあります。
これは一見税金がかからなくて得のように思えるかもしれませんが、後々税務署から指摘を受けた場合に追徴課税の対象となる可能性があり、さらに延滞税などが加算されることもあります。
また、他の相続人との間で財産の評価を巡ってトラブルになる可能性も否定できません。
増築登記をきちんと行うことは、固定資産税や相続税を適切に計算・申告するために不可欠であり、将来的な税金に関するリスクを回避するためにも非常に重要です。
税金に関する詳しい情報は、税理士などの専門家に相談することをお勧めします。

住宅ローン利用時の注意点

住宅ローンを利用している建物や、これから住宅ローンを利用して増築資金を賄おうと考えている場合、増築登記は特に重要な手続きとなります。
金融機関は、住宅ローンを融資する際に、対象となる建物に抵当権を設定します。
この抵当権設定登記は、建物の登記記録に基づいて行われます。
もし増築によって建物の面積が変更されたにもかかわらず増築登記を行っていない場合、抵当権が設定されている登記記録上の建物と、実際の建物の状況が一致しないことになります。
金融機関は、登記されていない増築部分を担保として認めないことが一般的です。
これは、未登記部分には法的な対抗力がなく、万が一ローンが返済できなくなった場合に金融機関が担保権を実行する際に支障が生じる可能性があるためです。
したがって、住宅ローンを利用中に増築を行った場合は、必ず増築登記を行い、その後、変更された登記記録に基づいて抵当権の変更登記(担保権変更登記)を行う必要があります。
金融機関によっては、増築工事の完了と増築登記の完了を融資実行の条件としている場合もあります。

また、これから増築資金を住宅ローンで借り入れようとする場合も、増築部分を含めた建物全体に対して抵当権を設定するために、増築完了後に増築登記を行うことが融資の条件となります。
増築工事が完了しても、増築登記が完了しない限り、金融機関からの融資金が実行されないというケースも珍しくありません。
住宅ローンの借り換えを検討している場合も同様で、増築登記が完了していることが借り換えの条件となることがほとんどです。
金融機関は、担保となる不動産の正確な情報を必要としているからです。
増築を計画する段階で、利用している、または利用予定の金融機関に増築の旨を伝え、増築登記や抵当権変更登記に関する手続きについて確認しておくことが非常に重要です。
金融機関によっては、提携している土地家屋調査士を紹介してくれる場合もあります。
住宅ローンと増築登記は密接に関連していますので、計画段階から金融機関とのコミュニケーションをしっかり取るようにしましょう。

まとめ

増築による建物の面積変更は、単に物理的な変化をもたらすだけでなく、法的な手続きである増築登記(建物表題部変更登記)を伴う重要な出来事です。
この登記は、建物の現状を正確に登記記録に反映させ、所有権の明確化や不動産取引の安全性を確保するために不動産登記法によって義務付けられています。
増築登記を行わないまま放置すると、法的な罰則のリスクだけでなく、将来的な売却や相続、住宅ローンの利用など、様々な場面で思わぬ不利益やトラブルに繋がる可能性があります。
手続きは、正確な測量や専門的な図面作成が必要となるため、多くの方が土地家屋調査士に依頼しています。
費用はかかりますが、専門家に任せることで正確かつスムーズな登記申請が期待できます。
増築登記が完了すると、建物の評価額が見直され、固定資産税や相続税にも影響が出ます。
特に住宅ローンを利用中または利用予定の方は、金融機関との関係で増築登記が必須となるケースがほとんどです。
増築を検討される際は、工事計画と並行して登記手続きについても情報収集を行い、必要であれば早めに専門家や関係機関に相談することをお勧めします。
適切な手続きを行うことで、増築後のマイホームで安心して快適な生活を送ることができるでしょう。

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