建物の階数を正しく登記することの重要性について、あなたはどれくらいご存知でしょうか?マイホームを建てたり、中古の不動産を購入したりする際に、建物の登記手続きは必ず行う必要がありますが、その中で「階数」という項目が意外と重要になってきます。
単に見た目の階数を記載すれば良いというわけではなく、不動産登記においては法律に基づいた正確なカウント方法が求められるからです。
もし、この階数が登記簿上で間違ってしまっていると、後々様々なトラブルに発展する可能性もゼロではありません。
例えば、将来建物を売却しようとした際に登記簿の情報と現況が異なっていると手続きが滞ったり、金融機関からの融資に影響したりすることもあります。
また、固定資産税の評価額にも関わってくる場合があるため、建物の階数を正しく登記するための基礎知識をしっかりと理解しておくことは、不動産を所有する上で非常に大切なのです。
この記事では、建物の階数登記がなぜ重要なのか、そして複雑な建物でも迷わない正確な階数の数え方、さらに増築などで階数が変わった場合の変更登記手続きについて、初心者の方にも分かりやすく解説していきます。
建物の階数を正しく登記することの重要性と基本
建物を所有するということは、その建物の情報を法務局の登記簿に記録するということです。
この登記簿には、所在や構造、床面積といった様々な情報が記載されますが、「階数」もその重要な項目の一つです。
なぜなら、登記簿に記載された情報は、その建物の現在の状態を公的に証明するものであり、様々な場面でこの情報が参照されるからです。
例えば、建物の売買、相続、贈与、あるいは住宅ローンを利用する際など、登記簿謄本(登記事項証明書)は必ず必要になります。
このとき、登記簿に記載されている階数が現況と異なっていたり、誤りがあったりすると、手続きがスムーズに進まなくなることがあります。
特に、金融機関は融資の判断材料として登記簿の情報を重視するため、不正確な情報は不利に働く可能性があります。
建物の登記は、その建物の権利関係だけでなく、物理的な状況を正確に公示する役割も担っており、階数はその建物の規模を示す重要な指標の一つなのです。
なぜ建物登記に正確な階数が必要なのか
建物登記において正確な階数が必要とされる理由はいくつかあります。
まず、登記簿は建物の「表題部」という箇所に、その建物の物理的な状況を記録します。
ここには、所在地、家屋番号、種類(居宅、店舗など)、構造、床面積、そして階数が記載されます。
これらの情報は、建物を特定し、その規模や用途を公的に示すために不可欠です。
例えば、同じ床面積の建物でも、平屋と2階建てでは構造や価値が異なりますし、建築基準法上の扱いや、将来の再建築時の制限なども変わってくる場合があります。
また、不動産の評価額を算出する際にも、階数は考慮される要素の一つです。
さらに、正確な登記情報は、隣地との境界問題や、建築基準法、都市計画法といった公法上の制限(例えば、容積率や斜線制限など)を判断する上でも基準となることがあります。
もし登記情報が不正確だと、これらの判断を誤る可能性が出てくるのです。
階数登記が不動産の権利や価値にどう影響するか
建物の階数が正確に登記されていることは、不動産の権利を保全し、その価値を適正に評価するために非常に重要です。
まず、権利の面では、登記簿に記載された情報は、その建物の存在と物理的な状況を第三者に対して証明する効力(対抗力)を持ちます。
もし階数が誤っている場合、その登記情報の信頼性が損なわれ、将来的な権利関係の変動(売買など)において疑義が生じる可能性があります。
例えば、登記簿上は2階建てなのに実際は3階建てだった場合、その追加された1階部分に関する権利関係が曖昧になりかねません。
価値の面では、階数は建物の規模や利用価値を示す指標の一つです。
正確な階数情報は、不動産鑑定や固定資産税の評価額算出の基礎データとなるため、これが誤っていると、適正な評価がなされない可能性があります。
特に、増築などで階数が増えたにも関わらず変更登記をしていない場合、登記簿上の情報が実際の価値を反映していないことになり、売却時に不利になるケースも考えられます。
階数登記が必要になる主な手続き
建物の階数登記が必要になる主な手続きは、「建物の表題登記」と「建物の表題部変更登記」です。
建物の表題登記は、新築した建物や、まだ登記されていない建物を初めて登記する際に行う手続きです。
このときに、建物の種類、構造、床面積、そして階数を正確に法務局に申請し、登記簿に記録してもらいます。
建物の表題登記は、建物の所有権を主張するための前提となる非常に重要な手続きであり、建物の完成から1ヶ月以内に行う義務があります。
一方、建物の表題部変更登記は、すでに登記されている建物の物理的な状況に変更があった場合に行う手続きです。
例えば、増築や減築によって床面積が変わった場合や、構造を変更した場合などに必要となりますが、階数が増減した場合もこの変更登記が必要です。
特に、平屋を2階建てにしたり、地下室を設けたりするなど、階数に影響する変更があった場合は、忘れずに変更登記を申請しなければなりません。
これらの手続きにおいて、階数の正確な情報は不可欠なのです。
知っておきたい!建物の階数の正しい数え方
建物の階数を数えることは、一見簡単そうに思えますが、不動産登記においては建築基準法に基づいた明確なルールがあります。
単に「見た目が何階建てか」という感覚でカウントするのではなく、法律上の「階」の定義に沿って判断する必要があります。
特に、地下室や屋根裏、ロフトといった特殊な空間がある場合や、メゾネットや吹抜けといった内部構造が複雑な建物の場合、どのように階数をカウントすれば良いか迷うことがあります。
不動産登記における階数のカウントは、この法律上の定義に則って行われるため、正確な知識を持っておくことが重要です。
登記実務においては、建築確認申請時の情報や、建物図面、各階平面図といった書類に基づいて階数を判断しますが、最終的な判断は現地の状況も踏まえて行われます。
自分で建物の状況を把握する際や、登記の専門家である土地家屋調査士に依頼する際に、基本的な数え方を知っておくとスムーズに進めることができるでしょう。
建築基準法における「階」の定義と基本的な考え方
建築基準法では、「地盤面下の階を地下階とし、地盤面上の階を地上階とする」と定義されており、一般的に「階」とは、建物の各層を指します。
しかし、単純に全ての層を1階、2階と数えるわけではありません。
重要なのは、建築基準法上の「階」としてカウントされるかどうかの判断基準です。
例えば、天井の高さが低すぎる空間や、特定の用途に限られる空間は、建築基準法上の階には含まれない場合があります。
登記においても、この建築基準法上の考え方を基本とすることが多いです。
基本的な考え方としては、建物の主要な部分を構成し、人が通常利用する空間として独立した層が「階」としてカウントされる傾向にあります。
ただし、登記実務においては、建築基準法上の定義だけでなく、不動産登記法の趣旨や過去の先例なども踏まえて判断されるため、必ずしも建築確認済証に記載された階数と一致するとは限りません。
この点が、多くの人が混乱しやすいポイントの一つです。
地下室、屋根裏、ロフト、塔屋などの特殊な部分の扱い
地下室、屋根裏、ロフト、塔屋といった特殊な空間は、その構造や利用状況によって階にカウントされるかどうかが異なります。
例えば、地下室は、その床面から地盤面までの高さが、その階の天井の高さの3分の1以上のものが建築基準法上の地下室とされます。
登記上も、この基準を満たす地下室は「地下○階」としてカウントされるのが一般的です。
一方、屋根裏やロフトは、一般的に天井の高さが1.4メートル以下で、かつ床面積がその階の床面積の2分の1未満であるなど、一定の基準を満たす場合は、建築基準法上の階には含まれず、登記上も階数にはカウントされないことが多いです。
しかし、これらの基準を超える場合や、独立した居室として利用可能な構造になっている場合は、階としてカウントされる可能性が出てきます。
塔屋(ペントハウスなど)についても、その面積が建築面積の8分の1以下など、一定の基準を満たす場合は階数にカウントされませんが、これを超える場合は階数に含めて判断されることがあります。
これらの判断は専門的な知識を要するため、迷う場合は土地家屋調査士に相談するのが最も確実です。
メゾネットや吹抜けがある場合の階数カウント
メゾネットタイプのアパートやマンション、あるいは一戸建てで大きな吹抜けがある場合も、階数のカウント方法が複雑になることがあります。
メゾネットは、一つの住戸が上下2層以上に分かれている構造ですが、登記上は、その住戸が属する建物の全体の階数で表示されます。
例えば、3階建ての建物の2階と3階を使ってメゾネットの住戸がある場合、その住戸は「2階、3階」といった形で登記簿に表示されることがありますが、建物の全体の階数は「3階建」となります。
吹抜けがある場合は、その吹抜け部分の床面積がないため、その部分は階の床面積には算入されません。
しかし、吹抜けがあることで、その上下の空間が一体的になり、階の数え方に影響を与えることがあります。
例えば、大きな吹抜けがあることで、見た目は2階建てに見えても、構造上は3層分の高さがある場合などです。
吹抜けによって階の一部が欠けている場合でも、残りの部分が独立した「階」としての要件を満たしていれば、それぞれの階がカウントされます。
これらの複雑な構造を持つ建物の階数を正確に判断するためには、建物の構造図や平面図を詳細に確認し、専門的な知見に基づいて判断する必要があります。
階数変更登記の手続きとスムーズに進めるためのポイント
建物を所有している間に、増築や減築によって建物の構造や床面積が変わることはよくあります。
特に、平屋の上に2階部分を増築したり、地下室を新たに設けたりした場合など、建物の階数が変更された際には、その変更内容を登記簿に反映させるための「建物の表題部変更登記」を申請する義務が生じます。
この手続きを怠ってしまうと、登記簿の情報と現況が異なり、様々な不利益を被る可能性があります。
例えば、建物を売却しようとした際に、買主や金融機関から登記情報の不一致を指摘され、売買契約がスムーズに進まなかったり、融資が受けられなくなったりすることがあります。
また、固定資産税の評価額が正しくないまま課税され続ける可能性もあります。
建物の物理的な状況に変更があった場合、所有者は変更があった日から1ヶ月以内に表題部変更登記を申請しなければならないと、不動産登記法で定められています。
この義務を怠ると、過料が課される可能性もあるため、変更があった際には速やかに手続きを行うことが重要です。
増築・減築で階数が変わった場合の変更登記義務
増築や減築によって建物の階数が変わった場合、所有者には速やかに変更登記を申請する義務があります。
例えば、平屋の建物に2階部分を増築して2階建てになった場合、登記簿上の階数を「1階建」から「2階建」に変更する必要があります。
また、地下室を掘削して設置した場合も、「地下1階付」といった形で登記簿に記載を追加する変更登記が必要です。
逆に、建物の階の一部を取り壊すなどして減築し、階数が減った場合も同様に変更登記が必要になります。
この変更登記は、建物の物理的な状況を登記簿に正確に反映させ、公的な情報を最新の状態に保つために不可欠な手続きです。
変更登記を怠ると、登記簿の情報が現実と乖離し、建物の所有権移転などの将来的な取引が困難になるだけでなく、法的な義務違反となります。
増改築工事が完了したら、速やかに登記手続きの準備に取りかかることが大切です。
階数変更登記の申請書類と手続きの流れ
階数変更登記の申請は、建物の所在地を管轄する法務局に対して行います。
申請に必要な主な書類は、登記申請書、建物図面、各階平面図、そして変更のあったことを証明する書類(例えば、建築確認済証や工事完了引渡証明書など)です。
特に、建物図面と各階平面図は、変更後の建物の正確な形状、位置、床面積、そして階数を図面で示すものであり、専門的な知識と正確な測量に基づいて作成する必要があります。
これらの図面は、不動産登記規則によってその記載方法が細かく定められており、素人が正確に作成するのは非常に困難です。
手続きの流れとしては、まず必要な書類を準備し、管轄の法務局に申請します。
法務局では、提出された書類に基づいて審査を行い、必要に応じて現地調査が行われることもあります。
審査が完了し、申請内容が適正であると認められれば、登記簿の記載が変更され、手続きは完了となります。
申請から完了までの期間は、法務局の混雑状況や申請内容によって異なりますが、通常は数週間から1ヶ月程度かかることが多いです。
自分でやる?専門家(土地家屋調査士)に依頼するメリット
建物の表題部変更登記は、法律上は建物の所有者自身が申請することも可能です。
しかし、前述のように、申請には専門的な知識が必要な建物図面や各階平面図の作成が伴います。
これらの図面は、建物の位置や形状、床面積などを正確に測量し、登記規則に則って作成しなければならず、少しでも誤りがあると補正を求められたり、申請が却下されたりする可能性があります。
また、法務局とのやり取りや、必要な書類の収集なども、慣れていない方にとっては時間と手間がかかる作業です。
そこで、多くの人が利用するのが、不動産の表示に関する登記の専門家である土地家屋調査士に依頼する方法です。
土地家屋調査士は、建物の測量や図面作成、そして登記申請手続きの代理を業として行うことが認められています。
専門家に依頼することで、正確かつ迅速に手続きを進めることができ、書類の不備による手戻りや、登記の誤りを防ぐことができます。
費用はかかりますが、手続きの手間や精神的な負担を考えると、特に複雑な増改築を行った場合や、登記手続きに不慣れな場合は、専門家に依頼するメリットは大きいと言えるでしょう。
まとめ
建物の階数を正しく登記することは、不動産を所有する上で非常に重要な基礎知識です。
登記簿に記載された階数は、その建物の公的な情報として、売買や相続、融資など様々な場面で参照されます。
もし登記されている階数が現況と異なっていると、将来的に思わぬトラブルに巻き込まれたり、不動産の価値評価に影響が出たりする可能性があります。
建物の階数を数える際には、単なる見た目ではなく、建築基準法上の定義や、地下室、屋根裏、ロフト、塔屋といった特殊な空間の扱い方、メゾネットや吹抜けがある場合のカウント方法など、専門的なルールが存在します。
これらのルールに基づいて正確に判断することが求められます。
また、増築や減築によって建物の階数が変わった場合は、変更があった日から1ヶ月以内に法務局に対して「建物の表題部変更登記」を申請する義務があります。
この手続きには、専門的な知識が必要な建物図面や各階平面図の作成が伴うため、正確かつスムーズに進めるためには、不動産の表示に関する登記の専門家である土地家屋調査士に依頼することを検討するのが賢明です。
建物の階数登記は、不動産の権利を明確にし、安心して不動産を所有・取引するために不可欠なプロセスであり、その重要性を理解しておくことが、あなたの不動産を守る第一歩となります。
もしご自身の建物の登記情報に不安がある場合や、増改築を検討されている場合は、早めに専門家である土地家屋調査士に相談してみることをお勧めします。
		
