建物の用途を変更したのに、登記簿謄本上の「種類」が古い情報のままになっていませんか?例えば、住居として使っていた建物を店舗に改装したり、倉庫として使っていた場所を事務所にしたりといったケースです。
このような場合、「建物の種類変更登記」という手続きが必要になります。
この登記を怠ると、後々さまざまな不都合が生じる可能性があるため、正確な知識を持って適切に進めることが非常に重要です。
しかし、「具体的にどう進めればいいの?」「どんな書類が必要なの?」「自分でできるの?」といった疑問をお持ちの方も多いでしょう。
この記事では、建物の種類変更登記の進め方と注意すべきことについて、初心者の方にも分かりやすく、そして専門的な視点も交えながら詳しく解説していきます。
この記事を最後までお読みいただければ、種類変更登記の全体像を把握し、スムーズに手続きを進めるためのヒントが得られるはずです。
建物の種類変更登記とは?どんな時に必要になる?
建物の種類変更登記は、その建物の登記簿謄本に記載されている「種類」という項目を、現在の建物の用途に合わせて変更するための手続きです。
不動産登記法では、建物の用途が変更された場合、所有者はその変更日から1ヶ月以内に種類変更登記を申請する義務があると定められています。
この手続きを怠ると、法律上の義務を果たしていないことになり、さまざまな問題を引き起こす可能性があります。
建物の用途は多岐にわたりますが、登記上の「種類」は、建物の主たる用途を示すものであり、不動産の取引や評価において非常に重要な情報となります。
登記上の「建物の種類」とは
不動産登記における「建物の種類」は、その建物の用途を法的に定めたものです。
代表的なものとしては、「居宅」(人が住むための建物)、「店舗」(商品を販売するための建物)、「事務所」(事務を行うための建物)、「倉庫」(物を保管するための建物)、「工場」(物品を製造するための建物)などがあります。
これらの種類は、建物の構造や設備、利用状況などを総合的に判断して決定されます。
例えば、一見住居のように見えても、その大部分を店舗として使用している場合は「店舗」として登記されることがあります。
登記簿謄本には、この「種類」の項目が必ず記載されており、その建物の公的な用途を示すものとなります。
登記簿謄本上の種類は、現況の建物の用途と一致している必要があります。
もし用途が変わったにもかかわらず登記を変更していない場合は、登記簿の情報が実態と異なる状態になってしまいます。
種類変更登記が必要となる主なケース
種類変更登記が必要になるのは、建物の用途が登記上の種類と異なってしまった場合です。
最も一般的なケースは、既存の建物を改修して用途を変更する「コンバージョン」や「用途変更」を行った場合です。
例えば、古い倉庫をリノベーションしてカフェやアパレルショップとして利用する場合、登記上の種類を「倉庫」から「店舗」に変更する必要があります。
また、住宅の一部を改装して事務所として使用したり、空き家を宿泊施設(民泊など)として利用したりする場合も、用途の変更に伴い種類変更登記が必要になることがあります。
増築や改築によって、建物の主たる用途が変わる場合も、種類変更登記が必要になることがあります。
例えば、居宅に大きな倉庫部分を増築し、その倉庫部分が建物の主要な部分となった場合などです。
建築基準法上の「用途変更確認申請」が必要なケースと重複することも多いですが、登記手続きは建築基準法の手続きとは別に、不動産登記法に基づいて行われる必要があります。
登記をしないとどうなる?デメリットとリスク
建物の種類変更登記を怠ると、いくつかのデメリットやリスクが生じます。
まず、不動産登記法上の申請義務違反となり、過料(罰金)が科される可能性があります。
これは罰金刑とは異なり、行政上のペナルティですが、登記をしないままでいると法的な責任を問われることになります。
さらに、登記簿謄本上の種類と現況の用途が異なっていると、不動産の売買や相続、贈与の際に問題が生じやすくなります。
買主や相続人が登記簿を見て、現況との違いに気づき、トラブルになるケースが少なくありません。
また、金融機関から融資を受ける際に、登記情報と現況が異なることを理由に融資を断られたり、条件が厳しくなったりすることもあります。
これは、金融機関が不動産の担保価値を評価する際に、登記簿の情報を重視するためです。
火災保険や地震保険についても、登記上の種類と実際の用途が異なっている場合、万一の際に保険金が支払われないリスクもゼロではありません。
現況に合った正しい登記をしておくことは、これらのリスクを回避し、不動産の権利関係を明確にするために非常に重要です。
種類変更登記の具体的な進め方と申請手続き
建物の種類変更登記を進めるにあたっては、いくつかの段階を踏む必要があります。
まずは必要な書類を正確に把握し、漏れなく収集・作成すること。
次に、集めた書類を添えて法務局に申請を行うという流れになります。
これらの手続きには専門的な知識が必要となる場面もありますが、基本的な流れを理解しておくことは、自分で手続きを進める場合でも、専門家に依頼する場合でも役立ちます。
スムーズに進めるためには、早めに準備を開始し、不明な点は専門家や法務局に相談することが大切です。
事前準備:必要書類の確認と収集方法
種類変更登記の申請には、いくつかの必要書類があります。
主なものとしては、まず「登記申請書」が必要です。
これは法務局のホームページから様式をダウンロードできます。
次に重要なのが、建物の用途が変更されたことを証明する「登記原因証明情報」です。
これは、例えば建物の改修工事に関する請負契約書や、建築基準法上の用途変更確認済証などが該当しますが、これらの書類がない場合や、用途変更の経緯を明確に説明する必要がある場合は、「登記原因証明情報」という書類を自分で作成するか、専門家に作成してもらう必要があります。
この書類には、いつ、どのような理由で建物の種類が変更されたのかを具体的に記載する必要があり、専門的な内容となるため、自分で作成するのはハードルが高いと感じる方もいるかもしれません。
さらに、建物の形状や各階の間取りを示す「建物図面」と「各階平面図」も必要です。
これらの図面は、建物の現況に合わせて正確に作成する必要があり、測量の知識も必要となるため、専門家である土地家屋調査士に依頼するのが一般的です。
その他、申請人の住民票や、代理人に依頼する場合は委任状なども必要になります。
これらの書類を漏れなく、正確に準備することが、スムーズな登記手続きの第一歩となります。
申請書類の作成と法務局への提出
必要書類が揃ったら、いよいよ登記申請書を作成します。
登記申請書には、建物の所在地や家屋番号、種類変更の原因とその日付、申請人の氏名や住所などを正確に記載します。
添付書類として、準備した登記原因証明情報、建物図面、各階平面図などを添えます。
申請書様式には記載例も掲載されていますので、参考にしながら作成を進めます。
書類が全て揃ったら、建物の所在地を管轄する法務局に申請を行います。
法務局の管轄は、インターネットで調べることができます。
申請方法は、法務局の窓口に直接提出する方法、郵送で提出する方法、そしてオンラインで申請する方法があります。
オンライン申請は、自宅や事務所から手続きできるメリットがありますが、事前の準備や専用ソフトが必要になります。
窓口申請や郵送申請の場合でも、書類に不備があると補正を求められることがあるため、時間に余裕を持って申請することが望ましいです。
申請書を提出する際は、控えとして申請書の写しを受け取っておくと安心です。
登記完了までの期間と費用目安
種類変更登記を法務局に申請してから完了するまでの期間は、法務局の混雑状況や申請内容、書類の不備の有無によって異なりますが、一般的には申請から1週間から2週間程度で完了することが多いようです。
ただし、書類に不備があった場合は、補正に時間がかかり、さらに期間が延びることもあります。
費用については、まず「登録免許税」がかかります。
種類変更登記の登録免許税は、不動産の価額(固定資産税評価額が基準となることが多いです)に1000分の1を乗じた金額となります。
例えば、不動産の価額が1000万円の場合、登録免許税は1万円となります。
これに加えて、登記簿謄本や公図などの書類取得費用がかかります。
さらに、専門家に依頼する場合は、その報酬が必要となります。
司法書士や土地家屋調査士の報酬額は、依頼する内容や事務所によって異なりますが、一般的に数万円から十数万円程度かかることが多いです。
自分で全ての手続きを行えば登録免許税と実費のみで済みますが、専門家に依頼する場合はこれらの報酬が加算されるため、総額は数十万円になることもあります。
費用を抑えたい場合は自分で挑戦することも可能ですが、専門知識が必要な書類作成や法務局とのやり取りを考えると、時間と手間、そして正確
		
